貸金業務取扱主任者 過去問
令和3年度(2021年)
問38 (貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること 問38)
問題文
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問題
貸金業務取扱主任者試験 令和3年度(2021年) 問38(貸付け及び貸付けに付随する取引に関する法令及び実務に関すること 問38) (訂正依頼・報告はこちら)
- 債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる。
- 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とし、特別の事情によって生じた損害は、特約がなければ、その賠償を請求することができない。
- 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
- 債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する。
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この過去問の解説 (2件)
01
法律では、債権者を保護するために、債権に対して以下の効力が付されています。
・債務不履行責任:債務者の攻めに帰すべき理由により債務不履行になった場合、債務者は法的責任を負う。
例)オーダードレスを注文したものの、注文書とは違う内容のドレスを納品した
→この場合、商品を取り換えるか、返金しないといけない。
・債権者代位権:債権者がその債権を保全するため、債務者が持つ第三者に対する権利を債務者に代わって行使する権利を負う。
例)AがBに100万円貸していて、BがCに対して100万円貸していた。
→この場合、AがCに100万円返済するよう請求できる。
・詐害行為取消権:債務者が不当に財産を処分した場合に債権者がその処分を無かったものにできる権利。
例)Aからの借金を返したくないBが、借金の担保にしていた土地をCに売ろうとした。
→この場合、AはBからCへの土地の売却を取り消すことができる。
これらの前提知識を踏まえ、それぞれの選択肢について検討しましょう。
(〇)
債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、その債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保存すれば足りる(民法413条1項)。
→選択肢と矛盾しないため、正しい。
(×)
特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる(民法416条2項)。
→選択肢と矛盾するため、誤り。
(〇)
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる(民法420条1項)。賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない(民法420条2項)。
→選択肢と矛盾しないため、正しい。
(〇)
債権者が、損害賠償として、その債権の目的である物又は権利の価額の全部の支払を受けたときは、債務者は、その物又は権利について当然に債権者に代位する(民法422条)。
→選択肢と矛盾しないため、正しい。
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02
「債権」とは、特定の人に、特定の行為や給付を請求できる権利のことです。一般的にイメージされる金銭債権のほかにもいろいろな種類がありますので、以下の表で整理しておきましょう。
【表】
内容が適切で、誤った選択肢です。
債務者は、債務の目的が特定物の引渡しであるときには、当該特定物を「善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)」をもって保管しなければなりません。
善管注意義務とは、ある職業や地位にいる人であれば、取引上において一般的に要求される程度の注意を払って事務や物を管理する義務を言います。
具体的には、たとえば米の売買契約を締結し、引き渡しが契約から3か月後とされた場合には、債務者は、1年間はそのお米について善管注意義務を負います。そのため、たとえばネズミに食べられたりしないように、きちんと倉庫で適切に管理する必要があるということです。
しかし、「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合」にまで、債権者がいつまでも善管注意義務を負い続けるのは大変です。そこで、この場合には、善管注意義務よりも低い注意義務の程度である「自己の財産に対するのと同一の注意」をもって保存保存すれば足りるとされています(第143条1項)。
なお、「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合」のことを、「受領遅滞」といいます。
したがって、正しい選択肢です。
内容が不適切で、正しい選択肢です。
債務の不履行に対する損害賠償の範囲には、「特別の損害」と「特別の事情によって生じた損害」があり、後者は「当事者がその事情を予見すべきであったとき」に請求することが可能です。民法416条に定められています。
具体例で検討します。
たとえば、クラシックカーの売買契約を締結しましたが、当該クラシックカーは家事で滅失していまいました。その場合、原則として、クラシックカー売買代金相当の損害を「通常生ずべき損害」として支払えば問題ありません。しかし、たとえば、買主がそのクラシックカーをマニアとの間で高額で転売する契約をしており、そのことが債務者との契約の前提となっていた場合(=当事者がその事情を予見すべきであった場合)には、債権者は、当該転売によって得ることができた金銭の賠償についても「特別の事情によって生じた損害」であるとして請求することができる、という意味の規定です。
したがって、「特約がなければ、その賠償を請求することができない。」という点が誤りです。
内容が適切で、誤った選択肢です。
「賠償額の予定」とは、契約当事者の一方が債務を履行しないという債務不履行があった場合にそなえ、あらかじめ損害賠償額を決めておくことを言います。
損害賠償額の算定は当事者間で争いになることが多いため、これを事前に決めておくことでスムーズな紛争解決を目指す趣旨です(420条1項。)
「賠償額の予定」をしたとしても、必ず賠償によって解決しなければならないわけではありません。債権者は、債務を履行しろ、という履行の請求ができますし、債務不履行を理由とした解除もできます(420条2項)。
したがって、正しい選択肢です。
内容が適切で、誤った選択肢です。
「債権者に代位」とは、債権者が、自分の債権を保全するために、債務者が第三者に対して持つ債権を、債務者に代わって行使できる権利です。
例えば、AがBに100万円を貸しており、Bは弁済期が到来したにもかかわらずお金を返してくれません。この場合において、BがCに対100万円を貸しており、債権を有している場合には、Aは自分の債権を保全するため、Bに代わって、Cに対し直接権利を行使できるとということです。
選択肢は、債権者が「債権の目的である物又は権利」の全額について支払いを受けて債権保全ができた場合には、債務者は、賠償したことに基づいて、その物又は権利に対する権利行使をすることができるとされています(民法422条)。これを、損害賠償による代位といいます。
したがって、選択肢の内容と一致しますので、正しい選択肢です。
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